遊戯王ルール解説 -タイミングを逃す-

こんにちは、WingTSKです。

 この記事では、おそらく多くのデュエリストが1度は疑問に思ったであろう、遊戯王OCGでの"タイミングを逃す"について解説していきます。
"チェーン"についての理解が必要な部分も多く出てきますので、先に「チェーンのしくみ」についての記事も確認していただけると良いかもしれません。

"タイミングを逃す"とは

遊戯王OCGには、カードの効果処理中やチェーンの処理中には、効果を割り込んで発動することはできない、というルールがあります。

チェーンが発生した場合、お互いに発動するカードや効果の確認が終わり、それらのカードや効果の処理を行う段階に入ってから、そのチェーンの処理が終わるまでの間は、新たなカードや効果を発動することはできません。



新たなカードや効果を発動したい場合は、カードの効果やチェーンの処理が終わってから発動する事になります。
誘発効果などの効果が、発動条件をカードの効果処理中やチェーンの処理中に満たした場合、そのタイミングでは発動せず、カードの効果やチェーンの処理が終了したタイミングで発動することになります。



しかし、『このカードが特殊召喚に成功した時に発動できる』といった発動条件のような、『時~~できる』タイプの発動条件を持つ効果の場合は、その条件を満たしたタイミング、つまり効果処理やチェーンの処理が条件を満たす処理で終わった直後のタイミングでしか発動することができません。
発動条件をカードの効果処理中やチェーンの処理中に満たした場合でも、その後別の処理が入った場合、カードの効果やチェーンの処理が終了したタイミングは、条件を満たすタイミングではなくなっているため、結果的に発動することができません。

このように、ルール上効果を発動することができないタイミングで発動条件を満たしたがために、結果的に効果を発動することができなくなってしまう現象のことを"タイミングを逃す"と呼びます

どの効果が"タイミングを逃す"効果で、どの効果がそうではないのか、それらを見分けるためには、その効果がどういった発動条件を持ち、どういったタイミングで発動できるのかを読み取ることで判断できます。

発動条件の読み方

発動条件は、第9期以降のカードであれば、丸数字から発動できる(or発動する)までの部分に書かれています。 

魔導書士バテル
(1):このカードが召喚・リバースした場合に発動する。デッキから「魔導書」魔法カード1枚を手札に加える。
(「遊戯王オフィシャルカードゲーム」公式カードデータベースより)

例えば「魔導書士バテル」というモンスターであれば、『このカードが召喚・リバースした場合に発動する』がこの効果の発動条件となります。
この効果の場合は『このカードが召喚・リバースした場合』という、この効果を発動するためのきっかけ(トリガー)を満たすタイミングで必ず『発動する』効果ということになります。

激流葬
(1):モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時に発動できる。フィールドのモンスターを全て破壊する。
(「遊戯王オフィシャルカードゲーム」公式カードデータベースより)
また、「激流葬」という罠カードの場合は、自分か相手の『モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時』というタイミングで、プレイヤーが任意に『発動できる』効果ということになります。

こういった違いや特徴などの詳細は、後ほど「"タイミングを逃す"効果と逃さない効果」の章で改めて見ていきます。

さて、効果の発動条件が書かれている部分には、発動タイミングだけではなく、発動する際に払う必要がある"コスト"や、効果を受ける範囲を発動時に決めて選択する"対象"などが、指定されている事もあります。
複数の条件が指定されている場合は、それらの条件すべてを満たすことができる場合に限ってその効果を発動できます。

また、「サンダー・ボルト」や「ハーピィの羽根帚」のような、発動条件などが無く、効果処理のみが記載されているカードもあります。
(丸数字の後に『発動する/発動できる』とは書かれずに、いきなり効果処理が書かれています。)
そういったカードや効果の場合は、ルール上発動できるタイミングであれば、効果処理が行えない状況を除いてどのタイミングでも発動できます。

余談ですが、最新のテキストではない場合や、古い記述方式のカードしか存在しない場合、テキストだけでは発動条件やコストなどの指定が判断しづらい場合もあるかもしれません。
その場合でも、遊戯王OCGの公式カードデータベースで、最新のカードテキストや詳細なカードルールを確認できます。
(ちなみに再録やエラッタ(カードテキストの更新)があった場合などで、同じカードでも古いテキストと新しいテキストの異なるテキストのカードがある場合がありますが、どちらの場合でも同じカードとして同じように対戦に使用することができます。古いテキストのカードを使用した場合でも、古いテキストの処理ではなく、公式カードデータベースに書かれている最新のテキストに基づいた処理で対戦を行います。)

"タイミングを逃す"効果と逃さない効果


まず発動条件のタイプは、
・『時~~できる』効果
・『場合~~できる』効果
・『(時/場合)~~する』効果
の主に3つとなります。

このうち、"タイミングを逃す"のは、『時~~できる』効果です。

『時~~できる』効果


太陽の神官」の『(2):フィールドのこのカードが破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「赤蟻アスカトル」または「スーパイ」1体を手札に加える。』効果の『フィールドのこのカードが破壊され墓地へ送られた時に発動できる』という発動条件のように、発動するタイミングの指定が『○○時』と書かれています。(※)
このタイプの効果は、発動する条件を満たしたそのタイミングで、プレイヤーが発動するかどうかを任意に選ぶことができます。
(※『バトルフェイズ開始時』『バトルフェイズ終了時』に発動すると書かれた効果については、それぞれバトルフェイズの「スタートステップ中」「エンドステップ中」に発動する効果となるので、他の『〇〇時』とは扱いが少し異なります。)

条件を満たしたそのタイミングでしか効果を発動する事ができないので、カード効果処理の最後やチェーンの処理の最後に条件を満たしたのであれば、その処理が終わった直後に改めてつくられるチェーン上で発動することができますが、カード効果処理の途中やチェーンの処理の途中でのみ条件を満たした場合には、プレイヤーが発動したいと考えていたとしても、"タイミングを逃す"ことになり発動することができません。

また、「灰流うらら」の効果も『時~~できる』タイプの効果ですが、こういった『○○が発動した時~~』というタイプのスペルスピード2以上の効果(クイックエフェクト)の場合は、条件を満たすカードや効果の発動に対して直接チェーンして発動するタイプの効果となります。
条件を満たす効果に別のカードや効果が先にチェーンされた場合、(チェーンされたその効果も条件を満たしていれば別ですが)発動できなくなります。

プレイヤー間では"時の任意効果"と呼ぶこともあります。

『場合~~できる』効果


オルターガイスト・マルチフェイカー」の『(1):自分が罠カードを発動した場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。』効果の『自分が罠カードを発動した場合に発動できる』という発動条件のように、発動するタイミングの指定が『○○場合』と書かれています。
このタイプの効果も、『時~~できる』効果と同じように、プレイヤーが発動するかどうかを任意に選ぶことができます。
条件を満たしたそのタイミングはもちろん、カード効果処理の途中やチェーンの処理の途中でのみ条件を満たした場合でも、その処理が終わった直後に改めてつくられるチェーン上で、"タイミングを逃す"ことなく発動することができます。

また、「オルターガイスト・マルチフェイカー」の『(1)』の効果のような『○○が発動した場合~~』というタイプの誘発効果の場合は、条件を満たすカードの発動や効果の発動が行われたチェーンの処理を終えてから、改めてつくられる別のチェーンで発動する事になります。

プレイヤー間では"場合の任意効果"と呼ぶこともあります。
 

『(時/場合)~~する』効果


魔導書士 バテル」の『(1):このカードが召喚・リバースした場合に発動する。デッキから「魔導書」魔法カード1枚を手札に加える。』効果のように、発動する条件の文末が『できる』ではなく『する』と書かれています。
このタイプの効果は、発動する条件を満たしているのであれば、プレイヤーの意思に関わらず必ず発動しなければなりません。
効果処理の途中や、チェーンの処理の途中で発動する条件を満たした場合でも、それらの処理終了後に、"タイミングを逃す"ことなく発動する事になります。

『~~する』効果の場合、発動タイミングの指定が『時』でも『場合』でも、"タイミングを逃す"かどうかの違いはありません。

プレイヤー間では"強制効果"と呼ぶこともあります。

おさらい

ここからは実際のデュエルでも起こりそうな状況を例に挙げ、それぞれの処理が"タイミングを逃す"のかどうかを見ていきたいと思います。

カードのテキストやカードイラストなどの情報については、遊戯王OCGの公式データベースへのリンクをカード名から貼っているので、そちらからご確認ください。
また、"チェーン"のルールなどいろいろなルールが関わる処理が出てきます。(「チェーンのしくみ」の解説記事はこちら

Case1チェーン1:「サイクロン」、チェーン2:「リビングデッドの呼び声」のケース


自分フィールド上にセットしている「リビングデッドの呼び声」を対象に相手が「サイクロン」を発動、それに対して対象となったその「リビングデッドの呼び声」を自分が発動した、という状況です。「リビングデッドの呼び声」の効果の対象としたのは「終末の騎士」としておきます。
チェーンが組み終わり効果処理を行う際は、後からチェーンされた効果から順に処理していくルールとなっています。
今回はチェーン2まで発動しているので、チェーンの効果処理はチェーン2:「リビングデッドの呼び声」→チェーン1:「サイクロン」の順で行います。
そのため、まずチェーン2の「リビングデッドの呼び声」の効果処理を行い、対象の「終末の騎士」が特殊召喚されます。
終末の騎士」は『このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる』効果を持っているのでここで発動したい…ところですが、ここではまだチェーン1の「サイクロン」の処理が残っています。
チェーンの処理中には新たに効果を割り込んで発動できないので、まだ「終末の騎士」の効果は発動できません。
さて、チェーン1の「サイクロン」の効果処理によって「リビングデッドの呼び声」が破壊され、(この時「リビングデッドの呼び声」で特殊召喚していた「終末の騎士」も一緒に破壊されます)チェーンの処理がすべて終わります。
チェーンの処理が終わったので、新たな効果を発動することができるようになりますが、「終末の騎士」の特殊召喚に成功した後で「サイクロン」の処理が行われたため、このタイミングは「終末の騎士」の特殊召喚に成功したタイミングではなくなっています。
終末の騎士」は『時~~できる』タイプの効果のため、効果を発動できず"タイミングを逃す"ことになります。
(ちなみに「終末の騎士」が破壊されフィールドにいない状況になっていますが、今回のケースには影響しません。)

Case2チェーン1:「暗黒界の雷」、チェーン2:「リビングデッドの呼び声」のケース


自分フィールド上にセットしている「リビングデッドの呼び声」を対象に相手が「暗黒界の雷」を発動、それに対して対象となった「リビングデッドの呼び声」を自分が発動した、という状況です。今回も「リビングデッドの呼び声」の効果の対象としたのは「終末の騎士」とします。
チェーン2の「リビングデッドの呼び声」の効果処理によって「終末の騎士」が特殊召喚されるところまでは、上のCase1と同じです。
今回のチェーン1は「暗黒界の雷」ですので、その効果処理に入るのですが、「暗黒界の雷」は対象のカードが裏側ではなくなった場合、そのカードを破壊できなくなります。
また、カードを破壊できなかった場合は、手札を捨てる処理も行うことができないため、「暗黒界の雷」の効果処理は特に何も行われずチェーンの処理が終了することになります。
今回のように、チェーンの結果によって効果処理が特に何も行われない場合でも、チェーン1の処理に入らなかったわけではありませんので、チェーンの処理が終了したタイミングはやはり「終末の騎士」の特殊召喚に成功したタイミング、ではなくなっています。
そのため、このケースでも「終末の騎士」は『時~~できる』タイプの効果のため、効果を発動できず"タイミングを逃す"ことになります。

Case3チェーン1:「歯車街」、チェーン2:「サイクロン」のケース


手札からフィールド魔法「歯車街」を出して発動したところ、相手がそれにチェーンしてその「歯車街」を対象として「サイクロン」が発動された状況です。
まず、チェーン2の「サイクロン」の効果処理を行い、対象となっている「歯車街」が破壊されます。
歯車街」は『このカードが破壊され墓地へ送られた時に発動できる』効果を持っていますが、これを発動することはできるのでしょうか。
フィールド魔法カードのように、ルール上発動後もフィールドに残り続ける種類の魔法・罠カードは、効果処理に入ったタイミングでフィールド上に存在しなくなっている場合、フィールドでの効果は適用されないルールとなっています(もっとも、「歯車街」は元からカードの発動時に行う効果処理は無いのですが…)。
Case2と同様に、チェーン1での効果処理は特に何も行われませんが、やはりチェーン1の処理に入らなかったわけではありませんので、チェーンの処理が終了したタイミングは、「歯車街」が破壊されたタイミングではありません。
歯車街」の『このカードが破壊され墓地へ送られた時に発動できる』効果は『時~~できる』タイプの効果のため発動できず"タイミングを逃す"ことになります。

Case4…チェーン1:「歯車街」、チェーン2:「ナチュル・ビースト」のケース


手札からフィールド魔法「歯車街」を発動したところ、相手がそれにチェーンして「ナチュル・ビースト」の(2)の効果を発動した状況です。
まず、チェーン2の「ナチュル・ビースト」の処理を行いますので、「歯車街」のカードの発動は無効になり、その「歯車街」が破壊されます。
いつもであれば、次にチェーン1の処理へ進むところですが、今回チェーン2の「ナチュル・ビースト」の効果は普通の破壊ではなく、チェーン1の「歯車街」はカードの発動が無効になっています。
このような場合、発動が無効になったその効果処理が行われなくなるだけではなく、発動が無効になったチェーンブロックの処理自体も行われなくなるため、今回はチェーン2の処理が終わった時点でこのチェーンの処理が終了ということになります。
チェーンの処理が終了したタイミングは"「歯車街」の発動が無効になったタイミングであると同時に「歯車街」が破壊された"タイミングということにもなるので、このケースでは「歯車街」の『このカードが破壊され墓地へ送られた時に発動できる』効果は発動できます。

Case5…「暗黒魔族ギルファー・デーモン」をリンク素材に使用してリンク召喚したケース


暗黒魔族ギルファー・デーモン」を含むリンク素材を使用して墓地へ送り、リンクモンスターをリンク召喚した状況です。
リンク召喚はそもそも効果の発動ではありませんので、チェーンを組みません。今まではチェーンなどの効果処理が絡む状況を例に挙げてきましたが、実はそういった以外の状況でも"タイミングを逃す"ことはあります。
暗黒魔族ギルファー・デーモン」は『このカードが墓地へ送られた時、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる』効果を持っています。
リンク素材として使用されたことによって「暗黒魔族ギルファー・デーモン」は墓地へ送られていますが、リンク素材を墓地へ送った後、リンク召喚によってモンスターが特殊召喚されています。
この場合、リンクモンスターが特殊召喚に成功した時というタイミングにはなりますが、リンク素材を墓地へ送った時というタイミングとは扱われません。
 「暗黒魔族ギルファー・デーモン」の効果は『時~~できる』効果のため、"タイミングを逃す"ことになり、効果を発動できません。

まとめ

"タイミングを逃す"は効果を発動できるかどうかを左右するルールです。
『時~~できる』効果は"タイミングを逃す"ことがあり、その場合は効果を発動できません。。
『時~~できる』効果かどうかは、効果の発動条件をチェックすることで判断できます。

また『時~~できる』効果以外にも、『場合~~できる』効果や『~~する』効果もあり、それらは"タイミングを逃す"ことはありません。

おわりに

"タイミングを逃す"は遊戯王OCGのルールの中でも、特に難しい分野の一つだと思います。
ルールを理解するためには、まず発動やチェーンについてのルールをしっかりと押さえておく必要がありますし、実際のデュエルで判断するためには、『時』と『場合』、『できる』と『する』、のような知らなければ見落としてしまいそうな細かい部分で見極める必要があります。
それでいて、対戦中でもコンボを考えている時でもOCGを楽しんでいるときに考慮していないといけない、そんな分野です。
複数の壁が立ちはだかるので「難しい」ですが、一方で一つ一つの壁はそんなに高くないと思っています。
今回の解説記事が、そういった壁を乗り越える助けになっていれば、と思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

追伸:

遊戯王OCGのルールでよく難しいといわれるルールに"同時に複数の効果が発動した場合"というルールがあります。
こちらは発動できるかどうかを決める"タイミングを逃す"とは異なり、同じタイミングで複数の効果が発動できる状況となった場合に、どういった順番で発動しチェーンするかを決めるルールです。
"タイミングを逃す"とよく混同されがちですが、"タイミングを逃す"は発動できるかを判断するルール、"同時に複数の効果が発動した場合"は発動できる効果をどういった順番で発動するかを決めるルール、と関わる部分が違います。
今後しっかり解説しようかなとは思っていますが、ここで紹介させて軽くいただきました。

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